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2018-01-23 1980年代首都圏中学受験 「男女優秀地域」の抽出

1980年代に、男子も女子もともに「難関中学」に合格している学区を「警察署の管轄域」ごとに集計し、その「上位」を地理的隣接関係に基づいて分類した。

「男女の対等」という事項が家庭の「文化資本の格差」の一要素になっているという疑惑があり、その問題意識から出現した今回の集計である。「男女の対等」が家庭において発現する場合、「父と母との対等関係」という形になることがまずは想定可能であり、その「対等関係」から来るコミュニケーション傾向が子供の「文化資本」ともなり、更にはその多寡が「格差」の一因にもなるだろう、という推測の上に推測を重ねたような仮定である。もっとも、その傾向が即座に「男子も女子も難関校に合格する」という結果になるとは無論全く限らない。単に「男子も女子も難関校に合格する」地域ならばそのような家庭が多いだろう、というこれまた推測に過ぎない。

「男女の対等」の基準として想定することができる候補には、「男女差が小さい」という事態と、「男女とも絶対値が(あまり)小さくない」という事態とがある。今回は後者の基準を採用した。なぜなら、「絶対値が小さくない」場合のほうが、現実に影響をもつからである。ようするに「優秀な異性が実在した」という経験をもつ者が一定数いることを保証できるわけだ。それに対して「男女差が小さい」だけだと、要するに絶対数が少ない学区のほうが単に確率的にそうなりやすいだけである。だから「差が小さい」ことに積極的な意味があまり無い。したがって現実に影響をもつ効果はあまり期待できない。なので、こちらを基準として用いることは今回はしていない。

早い話「合格者の絶対値」が大きい学区が選ばれやすいような基準を用いている、と言っても良いと思う。ただしいくつかの署域は「割を食った」格好になっている。たとえば板橋区や江戸川区といったあたりが「割を食った」。これらの中には合格者の「絶対値」は多くとも、どちらか片方の性の合格者が絶対値として小さいという学区の割合が多かったのだ。

「男子も女子も難関校に合格する」ということが、どのような原因や結果と関係をもつのかはにわかには判定しづらい。大まかに言って「生徒の所属階層のひどく高い」地域だと「女子の合格者が男子に比較してかなり少ない」傾向が、ときどき散見される。この種の地域は公立に進学してもさほど「心配」が無いからだろう。こういう地域だと男子ばかりがやたら合格していることがある。ただしその逆は保証できない(つまり、男子ばかり合格する地域は所属階層がひどく高い、とは全く断定できない)。また反面、「治安の悪そうな」地域だと「女子ばかり合格しており男子の合格者が少ない」傾向がときどきある。要は女子だと公立中学進学を絶対に回避したいのだが「勢い余って」なぜか難関校に受かってしまった、といった事象が起きやすいタイプの地域である。この時代の女子の難関校は、出題内容が男子に比較して「易しい出題を素早く、またとりこぼさず得点する」ほうに幾分寄っているので、「勢い余って」の合格もありうるように思える。と、このように、「男女ともに難関校に合格する」わけではない地域というのがそれなりにいろいろであるので、その否定形である「男女ともに難関校に合格する」という地域も「男女の平等が体現された地域である」と単純に即断することなど到底できない。あくまで「優秀な異性が存在するという経験」をもつ者が確率的に多いだろう、ということでしかない。それが「男女の対等の体現」であるかはまた、議論の余地がいくらでもあろう。このことは確認しておこう。

筆者がここで前提している事柄は実はかなり、世間の良識に逆らったものを含んでいる。というのも、通常ならば、「男女ともに難関校に合格する」学区というのは、中学受験ということに加熱した地域であり、この1980年代ごろなら「受験競争の病理」とでも定式化されるような状態である。しかし、その「病理」は同時に「優秀な異性が世の中に存在する」ということの認識を伴うものであり、また、「男女ともに対等に活躍する」ことを許容する文化傾向を併せ持つ可能性をもつものであった。つまり「周囲に難関校合格者の多い環境」で育った者は、また「優秀な異性が存在する」という社会感覚をもつ可能性が高い。反対に「周囲に難関校合格者の少ない環境」で育った者は、家庭環境がそうでなければ、「優秀な異性が存在する」という社会感覚をもつことが難しいことも多い。その点で、「男女ともに難関校に合格する」学区のほうが「良い環境」である、という一面を筆者は少し強調したいのである。そしてこれは当時でも、そしておそらく現在でも常識にかなり逆らった見方でもあるのだ。たとえば通常だと、「周囲に難関校合格者の少ない環境」で独力で努力することのほうが称揚されやすいわけだが、そこには「優秀な異性が世の中に存在する」ということの認識を伴わない、というリスクがあるわけだ。

難関校として男子は「開成、麻布、武蔵、筑駒、栄光」を、女子は「桜蔭、女子学院、雙葉、フェリス」を採用した。実はこの段階でもすでに男女の間に差があり、女子の難関校は男子のそれと同じ意味合いの学校ではあまりない。要するに、女子の難関校はこの時代には、「開成、麻布、武蔵、筑駒、栄光」と結婚できるОLになれる確率の高い学校、という意味合いでしかない。女子が一流会社に就職するのはそこで働くためではなく、そこで働く男性と結婚するために過ぎなかったわけだ。この時代はまだ、女子の難関校は十分に成熟した選択肢にはなっていない、というべきであり、あくまで相対的なものに過ぎない。この時代でも女子は調査対象の学校を変えれば、結果が変わることもありうる。特に社会科教育に着目しての調査対象選択は一考に値するようにも思う。

なお、東大に男女とも大量に合格する学芸大附属高校というコクリツ高校があるが、その附属中学は、附属高校に約半分しか進学できないと言われている。なので、その附属中学を「難関校」として扱うことには、筆者にはかなり強い抵抗があった。なぜならその進学システム自体が「第一志望に落ちた」子でないと進学したくないようなものであるため、ここに進学する子供は「やむをえず」の子が多い筈であると推察できるからだ(第一志望に落ちた子か、学費が少しでも安い方が良い子)。

最後に調査資料とその処理について簡単に説明する。東京に本拠地のある四谷大塚進学教室の合格者名簿の1982・83・85・86・87年を用いた。各公立小学校の合格者数を集計する。その際、同一人物の複数校合格は除外し、対象校のうち何校に合格しようとも一校分として計算する。1987年のいわゆる「サンデーショック」による大量の複数合格ももちろん同様にして処理している。また居住市区からして明らかに越境入学だと思える場合は、その合格者は除外する。理由はこの調査の争点がその学区に居住可能かどうかであるからだ。小学校のほうが属する管轄署で分類し、署ごとに分類する。つまり合格者ひとりひとりに照準した場合、通学域のほうと全く同じ管轄署で算出されているとは限らない。

管轄署ごとに、合格者数が「男子2名、女子2名以上」であるような公立小学校を抽出し、それらの署域ごとの合計を求める。署域ごとの合計が「男子3名、女子3名以上」になる署のみ、調査対象として抽出する。ただし、神奈川県の栄光とフェリスの判明合格者数が、東京の学校のそれに比べて著しく少ないため、目安として「横浜駅以西」の署域に関しては、「男子2名、女子2名以上」を調査対象というふうに基準を少し切り下げる。この地域はおそらく四谷大塚ではなく「日能研」の特権的なエリアなのだ。

補足として、この時代の四谷大塚進学教室のシステムと、調査目的とのかかわりについて述べよう。四谷大塚進学教室は五年時は違うが、六年生になると「Cコース」という上位生徒用のコースを設け、そこでは「男女比」が推定で「6:1」とか「7:1」程度になり、圧倒的に男子が多い。なおかつ、同じ試験問題を用いている試験であるにもかかわらず、男女別に順位表を作成し、「男子と女子とが同一平面上で比較される」機会が無くなる。なので、このCコースで一年間を過ごすと、「優秀な男子のほうが女子よりも何倍も存在する」ような印象を形成することになり、また、「男子と女子とが直接比較される」機会も無いことになる。なお、修了時に女子生徒は「総代」(卒業証書授与)までしかなることができず、「謝辞を読む」者は必ず男子生徒になる。「男子と女子とが直接比較される」機会を作らないため、このような「不平等」も可能なのである。なので、四谷大塚進学教室で過ごした者に関しては、とりわけ「所属する居住地域や小学校」での「優秀な異性の存在」経験の有無は重要になる。

範域1
  • 東京文京駒込(男3 女3)
  • 東京文京本富士(男26 女30)
  • 東京文京富坂(男7 女9)
  • 東京千代田麹町(男11 女12)
  • 東京新宿牛込(男14 女14)
  • 東京新宿戸塚(男15 女14)
  • 東京文京大塚(男7 女4)
  • 東京豊島巣鴨(男6 女5)
  • 東京豊島目白(男6 女5)
  • 東京練馬練馬(男40 女31)
  • 東京練馬光が丘(男8 女6)
  • 東京板橋志村(男20 女19)
  • 東京練馬石神井(男40 女39)
  • 埼玉朝霞(男11 女11)
  • 東京中野野方(男34 女36)
  • 東京田無(男5 女6)
  • 東京小金井(男9 女13)
  • 東京三鷹(男18 女17)
  • 東京武蔵野(男28 女16)
  • 東京杉並荻窪(男32 女34)
  • 東京杉並杉並(男35 女38)
  • 東京中野中野(男28 女17)
  • 東京新宿新宿(男25 女13)
  • 東京渋谷代々木(男20 女17)
  • 東京世田谷北沢(男39 女27)
  • 東京杉並高井戸(男43 女40)
  • 東京世田谷成城(男28 女34)
  • 東京調布(男10 女12)
  • 神奈川川崎多摩(男9 女6)
  • 神奈川川崎麻生(男12 女12)
  • 東京町田(男33 女27)
  • 神奈川横浜緑(男12 女5)
  • 神奈川横浜旭(男9 女7)
  • 神奈川横浜保土ケ谷(男2 女5)
  • 神奈川横浜青葉(男43 女62)
  • 神奈川川崎宮前(男21 女18)
  • 神奈川横浜都筑(男3 女4)
  • 神奈川横浜港北(男19 女18)
  • 神奈川横浜神奈川(男5 女6)
  • 東京世田谷玉川(男47 女42)
  • 東京世田谷世田谷(男22 女19)
  • 東京渋谷渋谷(男20 女13)
  • 東京渋谷原宿(男7 女5)
  • 東京港赤坂(男16 女14)
  • 東京港麻布(男17 女6)
  • 東京目黒目黒(男48 女38)
  • 東京目黒碑文谷(男23 女25)
  • 東京大田田園調布(男26 女25)
  • 東京大田池上(男20 女17)
  • 東京大田蒲田(男7 女4)
  • 東京大田大森(男6 女9)
  • 東京品川荏原(男8 女9)
  • 東京品川大井(男7 女4)
  • 東京品川大崎(男6 女5)
  • 東京品川品川(男10 女9)
  • 東京港高輪(男17 女17)
範域2
  • 千葉我孫子(男8 女4)
  • 千葉柏(男23 女18)
  • 千葉流山(男5 女7)
範域3
  • 千葉船橋東(男3 女3)
範域4
  • 千葉松戸(男9 女11)
  • 千葉市川(男31 女36)
範域5
  • 千葉浦安(男4 女8)
範域6
  • 埼玉浦和(男9 女6)
範域7
  • 東京足立綾瀬(男4 女5)
範域8
  • 東京墨田本所(男5 女10)
  • 東京江東深川(男3 女6)
  • 東京江東城東(男4 女5)
範域9
  • 神奈川横浜山手(男2 女2)
範域10
  • 神奈川横浜港南(男2 女2)
  • 神奈川横浜栄(男9 女10)
  • 神奈川鎌倉(男3 女2)
範域11
  • 神奈川葉山(男3 女2)

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