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2018-02-27 80年代「男子御三家」合格者の居住地傾向概観

追記:麻布中の合格者合計数を修正した。それに伴って占有率も修正した。2018.03.09

以下の、リンク先の筆者作成PDFファイルと、それに関連する算出結果から、次に示すような見解をひき出してみる。

80年代「男子御三家」合格者の居住地傾向概観資料(PDFファイル)

各校の「同学区者占有率」
項目 開成合格者 麻布合格者 武蔵合格者
集計合格者総数 (私国立小から含む) 915名 982名 548名
「該当各校に2 名以上合格公立校」 からの合格者数 387名 550名 281名
「該当各校に2 名以上合格公立校」 からの合格者占有率 42.3% 56.0% 51.2%

結論として言うと、「難関中学合格者は、難関中学合格者の居住地域の偏りの全体像を認識することが1980年代には難しい」となる。どういうことか。

まず開成である。開成の合格者の出身小学校一覧を眺めていて普通まず感じるのが「茫漠としていてとりとめがない」である。要するに「開成に多く進学する地域が存在する」という印象をもつことが難しい。その印象の根拠が、上に示した「同学区者占有率」である。麻布や武蔵に比べ、開成は42%とやや少ない。要するに開成というのは「開成に多く合格する学区」からの合格者の占有率が低めの学校なのだ。

開成の在籍生徒の居住地で強調される傾向はだから、「いろんな地域から生徒が来ている」であり、特に話題になりやすいのは「やたら遠方から通学している生徒がいる」である。たとえば本多勝一『子供たちの復讐』(朝日出版社、1989)や森上展安『10歳の選択 中学受験の教育論』(ダイヤモンド社、2009)でもそのような話題が生徒や事務長から出る。たとえば水戸や九十九里浜などから通学している生徒が言及された。

その一方で、上掲の「居住地傾向概観資料」を参照してみると、少なくとも千葉県の柏を中心とする一帯は、開成合格者が特権的に多い地域といって良いこともわかる。ただ、それは結果からみると明らかなのだが、言説の形で見ることは意外と多くない。一方、言説の形で既視感があるのは「開成は下町の生徒が多い」である。先の森上本でも日暮里・舎人ライナー沿線に200人規模で生徒が住んでいる、という言及がある。しかし、そういった傾向はたしかに多少はあるかもしれないが、「居住地傾向概観資料」を見てもわかるように、少なくとも80年代にはそういったくっきりとした傾向は存在しなかった。この時代においても、江戸川区や足立区からの合格者と、目黒区や世田谷区からの合格者とでは、後者のほうが少し多いんじゃないかなあ、くらいの傾向ではあるのだ。なお、地域とは別に、「大規模公務員住宅のある学区」からの合格者は抜きんでて多い、という傾向もあるにはある。官僚の子供は開成志向が強いかもしれないわけだ。

他方、麻布の場合は「麻布のある広尾駅へのアクセスの良い地域の生徒が多い」すなわち「港区および東急沿線(特に田園都市線と東横線沿線)の生徒が多い、と認識されやすくなり、武蔵の場合は「武蔵のある練馬区に近接している地域の生徒が多い」すなわち「練馬区、中野区、杉並区、武蔵野市、三鷹市などの生徒が多い」、と認識されやすくなる(ただし交通アクセスが良いわけではない)。麻布の場合は「近いわけではなくともアクセスの良い地域」の生徒が多いと認識されやすくなり、武蔵の場合は「アクセスは良くなくとも近い地域」の生徒が多いと認識されやすくなるわけだ。

このように、中学受験難関校の合格者は居住地が棲み分けてしまい、各校ごとにその「理解の仕方」も異なるため、全体としてみたときの「難関校に合格するような小学生の居住地の偏り」≒「その親であるような階層の居住地の偏り」の「全貌」が見えにくくなる。実際には、これらのなかから「筑駒に進学する者」も多く出るため、なおさら分散してしまい、相互に傾向が見えにくくなる。麻布や筑駒の場合だと「ブルジョアの子供が多い」となり、それはそれである程度正しいものの、「高学力→金持ち」と短絡されやすくもなる。しかし実際にはそこまでの金持ちである必要はなく、むしろそれと連動する各種の要因をより多く満たしている者が有利になるという複合的な現象なのだ。

ということはすなわち、「そもそも首都圏の居住地の全体」に「格差」それも「地理的・自然災害リスク」の格差があること自体も、これらの出身者は認識しづらくなる、という可能性があるわけだ。その指摘だけしておく。


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